イラク情勢に関する「幻の報告書」について

昨日のの日記に対する通りすがりさんの指摘中、「政治的に行くことに決まっている」というのが今回のキーワードでしょう。ただこれはまさに役人的発想であって、とても野党や国民の皆様に胸を張って説明できるもんじゃありません。
普通に考えれば、報告書とは実際に見聞きしたものを予断を加えず必要十分な内容を書いてこそ報告書だと思うのです。それに加え報告者の意見を入れて、完成だと思うのです(対外発表の段になってからどう発表するかは別問題)。だから、報告書が事前にできている、となると、実際の調査もしないででっち上げた、と批判されてもしょうがない。
ところが、さらに今回は違うところがあります。件の衆院イラク特別委員会における赤嶺議員の質問と石破防衛庁長官の答弁を衆議院国会中継サイトの過去のライブラリで確認してみましたが(便利な世の中です)、石破長官はこの報告書を、「(外務省やオランダ軍やその他のソースから得た)現地の情報を、それが正しいかどうか、新たな変化がないかどうかを確認してきた」ものと位置づけています。そりゃそうだ、あんな短時間で現地情勢の詳細な報告書を一から書けるわけがない。
これに対し、赤嶺議員は、例の評議会議長のコメントがあらかじめ載っており、そこに注意書きとして「最新のコメントを再度確認できれば望ましいと、しかも文書でとれればなおいい」と書いてあるじゃないか、これは政府に有利な発言を引き出そうとしているのではないか、先遣隊が確認に行ったと言っても、それは確認ではなく、都合のいい事実をでっち上げようとしているのではないか、という点を特に批判しています(文言は正確ではありません)。
赤嶺議員がどのような陰謀史観を持っているか不明ですが、特にご関心の「コメント」の件については、何ら問題になることではないと思います。先遣隊が旅立った時点では評議会議長はこんなことを言っていた、最新のコメントが取れれば幸いである、以上に読み取ることはなかなか不可能です。だいたい例えば議長が翻意して、先遣隊に「来てくれるな」と言ったりしたら、しかもそれをねつ造して「歓迎している」なんて報告書に書いたら、彼の口を封じることはできませんから、いずれマスコミにばれて大問題になることは必至。それを考えると先遣隊報告書で嘘をつく理由がなくなります。「文書が望ましい」というのは単なる役人の習性です。単なる発言よりも「紙」の方が重いですから、そりゃ議長から発言だけでなく紙ももらえれば御の字です。だいたい、国会で野党が「議長がそんなこと本当に言ったのか」なんて追及することも予測の範囲内ですから、そのために「ほらこのとおり」と見せられるものがあった方がいいに決まっています。だいたい評議会の件でも解散しているんだか解散していないんだかで混乱しましたが、相手方から紙さえもらえば「いやこのときにはこれこのとおり実態はちゃんとあったんですよ」とか説明できたでしょう。
というわけで、赤嶺議員の特段のご関心である評議会議長コメントの件はこれ以上問題にしようがありません。それに防衛庁も外務省もこのFAXの存在を絶対に認めないでしょう。私が防衛庁の担当者でも、んなものは知らん、最近は画像加工技術が発達していますからねぇとでも答えるでしょう。国会が空転していると国会待機がなくなったりして楽なのですが、これで来年度予算案の審議まで遅れると、三月末までに予算が成立しなくて暫定予算なんてことにもなりかねません。そうなると事務が爆発するので、正常化してほしいような気もする。微妙なお年頃です。
(ともあれ、私は「幻の報告書」は実在していた、という方に一票入れます。)