役所のITの謎(政治資金収支報告書に関連して)

id:von_yosukeyan:20040326#p1にて「謎の政治資金規正法による公開文書」の話が。id:kanryo:20030921#p1の話ですね。ついでにid:kanryo:20030922#p3も。コメント欄でもためになる指摘が。今読み返すと私の意見はちょっと冷静でなくてみっともない。
役人ははとにかく「横並び」を気にして、他の役所より出すぎないように、他の役所より引っ込みすぎないようにする(出過ぎたり引っ込みすぎたりするとそれだけで批判対象にされるため)。
とか言いつつIT関連のことはなせか横並びがとれなくて、ついこの間までOASYSを使っている役所があったり、外務省職員は個人メールアドレスを持っていなかったり(持っていなかったのか、公開していなかっただけなのかは不明)、未だに一太郎を使いまくる役所もあるし、中央省庁のwebサイトはデザインが標準化されていなくて、どこに何があるかよく分からなかったり、それどころか同じ役所の中でも局によってサイトの構成が違ったりと、さんざんである。(なお、外務省に個人メールアドレスがなかったのは、既に在外公館と本省を結ぶ強固な「公電網」があり、また機密性の高い情報のやりとりに電子メールは不向きである、という理由からだと思われる。また、日本語の文書を美しく整形するためには一太郎が一番ではあるので、一太郎を使う判断も分からなくはない。)
情報システム担当でないので技術的なことはよく分からないが、役人の通常の思考パターンからしていくつか原因が考えられる。一つには「あまり公開したくない」という心理が働いている、もう一つには「システム利用者のことをあまり考えず、システム屋さんが提案するものを十分審査する能力を持たず、結局『いいなり』的にシステムを採用している」、ついでに言うと「予算を消化しなければならない」ということがあるのではないか。
さらに言うならば、今ある手続きをそのまま情報システム化しようとするので、融通が利かなくなっている面もある。これが今回「専用ビューワー」を用意した最大の理由だろう*1政治資金収支報告書の内容なんて、csvでダウンロードできればその後の集計や比較の作業も楽で一番いいのだが、政治資金規正法によれば「提出された報告書を公開する」という建前になっているので、コンピュータで扱いやすい性質のデータに加工して公開することができない。提出する報告書の書式及び記載すべき事項については総務省令で定められているが、基本的には紙媒体を想定した書式になっており、実際に提出は紙で行われるだろうから、それをそのまま取り込んだイメージ形式でしか公表できない。「閲覧」は認められていても「複写」は認められていないからコピーもできない(と主張する)。IT導入が効果を上げるためには仕事のやり方も変えなければならない、という鉄則が守られていない。この報告書のネットによる公表は、「ネットで公表する」ということが目的であって、政治資金の透明度を高めるとかそういうことが目的ではない。(ん?待てよ、手続き電子化の関係でこれも電子提出ができるようになるのかな?)
ただ、政治資金収支報告書をどのように公開するかということは、非常に高度な政治マターなので、総務省の担当者が保守的に決定を行ったのは分からなくもない(この点前言を修正する)。
国会会議録や特許情報の検索については、例えば他人にある議事録をURLで示そうとしてもできず、いちいち検索し直さなくてはならないことが問題であると思うが、これは何でそのようなことになっているのかいまいちよく分からない(id:kanryo:20040102#p2及びコメント欄、さらにはid:von_yosukeyan:20040106#p2参照)。不便ではあるのだが、もしこの不便を解消しようとすると膨大な計算機資源(つまりは膨大な税金)が必要ならば、バランスを考える必要があるように思う。正直言ってこの辺の技術的な話はよく分からない。要研究。
ようやく最近になって総務省を中心にシステムの整合性をとるという話がなされているが、現状では人事・会計システムの話のみと聞いている。情報へのアクセスを容易にするためにも、行政コストを低減させるためにももう少し考えていかなければならないのは確かであって、私も関心を持っているところである。
(参考)スラッシュドットジャパン 印刷できない(と主張している)政治資金収支報告書、WEBで公開

*1:もっとも、画面に映っているからにはコンピュータにコピーがあるわけであって、はっきり言ってこの報告書、コピーも印刷も(略)。これを回避するには…flashだったら総務省の意図する公開方法が実現できるのかな。わからん。数日後に「印刷できる不具合が見つかった」とか言って総務省が公開を中止したらお笑いだ。