ニート対策231億円!がちょっと誇張、ということのさらなる根拠

経済財政諮問会議資料

若年雇用者対策ってのは実のところ昨年度のホットイシューだった。
http://www.keizai-shimon.go.jp/explain/progress/job/koyou.html#s03
上記は経済財政諮問会議のwebサイト。ここでは、若年雇用者対策はまさに失業対策の一環として位置づけられている。一連の会議で、若者自立・戦略プランが取りまとめられ、このプランを元に平成16年度予算が編成された(うー、あー、まぁいいや)。17年度概算要求についても、このラインは維持されている(はず)。
わずか一年前のプランではあるが、この文書には「ニート」あるいは「NEET」という文字が全く出てこない。なぜかというならば、玄田先生が「1月発行の論壇誌ニートについて論じ」、「今年2月、国会で初めて取り上げられ」(参考:朝日新聞記事)、例の玄田先生の本が出版され(あるいは「働いたら負けかな、と思っている」あの青年(ニート君)がテレビに出演し)、NEETが話題になったのががこのプラン取りまとめよりあとだったからだ。
基本的な政策は本年度から引き続き。だけどNEETの文字追加。NEET自体には積極的な意味がないような気が。

来年度概算要求と、本年度予算に関する厚生労働省資料の比較

先のエントリで来年度予算案に関する厚労省資料にリンクを張ったが、次は昨年度の資料。つまり平成16年度予算案を示す(昨年12月時点。なお予算は政府案のまま可決成立したので、これがそのまま本年度予算の資料)。
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/04syokan/syuyou04.html
平成16年度予算案でのタイトルは、

若年者を中心とした人間力の強化

平成17年度概算要求でのタイトルは、

若年者を中心とした「人間力」強化の推進

本年度予算で「強化」したので、来年度はさらに「推進」していくという役人にとっては基本的なレトリックが展開されているところが涙を誘うが、基本的な項目立ては同じだ。同じ項目で、今年は「NEET」の文字が入っているだけ。
さらに。本年度予算で「「若者自立・挑戦プラン」の推進」の項目に入っている事業のうちいくつかが、来年度要求では「若者人間力強化プロジェクトの推進」(いわゆるニート対策)にカウントされている。具体的には「キャリア探索プログラム」や「若年者試行雇用事業」などだ。
これに伴い、計数にも変更が出ている。すなわち、本年度予算資料では「「若者自立・挑戦プラン」の推進」に301億円が充てられていることになっているのに対し、来年度要求資料では、本年度予算は190億円となっている(カッコ書きのところね)。一方、「若者人間力強化プロジェクトの推進」の項目は本年度予算にはなかったのに、来年度要求資料では本年度予算が126億円となっている。これだけでもいわゆる「ニート対策」というのが「寄せ集め」であることが分かる。
それにしても、本年度126億から来年度231億への増加は注目に値する。しかしこの大幅増はNEETのためかというと、必ずしもそうでもない。例えば本年度予算で「「若者自立・挑戦プラン」の推進」に分類されていた「若年者試行雇用事業」だけを見ても、本年度86億円に対し来年度要求109億円。23億円の増加だ。NEETという言葉が流行らず、「若者自立・挑戦プラン」路線のままだったとしても、この増額要求はなされただろう。
というわけで、NEETという概念を重視して新規に要求された予算は、231億円よりかなり少ない、と言える。試しに、来年度要求資料で「若者人間力強化プロジェクトの推進」にカウントされているもののうち、新規のもののみを足し合わせると、44.1億円となる。ま、これだけでも結構な額だが…。ついでに言うと、「新規」とか言いながら、実はサンセット方式で消滅した予算の焼き直しだったりするものも含まれているかも。…かも。