流動性と役人の雇用。

コメント欄にて御教示いただいていたid:flapjackさんところの議論について。だんだんご指摘がたまっていくなぁ(笑)
新聞記者の世界のことは知らないのでよくわかりませんが((福)たんに語ってもらうか)、役人の世界について若干。
役人の世界には流動性がありません…と書こうと思っていたらまぁ、社会保険庁長官に民間の人が。特殊法人特殊会社の理事長・社長ならともかく、本省の局長や外局(○○庁)の長は役人の席であって、それこそ戦前とか戦後の混乱期を除いては民間人が座った例はなかったはず(詳細に調べたことはないですが)。これは一大事件です。
しかしながら、今回の人事は年金改革法案審議の余波による突発事態と言ってよく、このまま社保庁民営化という事態に至るのか、また他の局長・長官ポストへ波及するのか全く不明です(後者については、私の感覚ではほぼないと思います)。余談ですが、社会保険庁職員の宿舎や研修施設を年金保険料で作ること、公用車を買うことは合理性があると思いますが、いくら何でもマッサージ器やぶら下がり健康器はやりすぎ。これは弁護できない。特別会計でたががゆるんでいるのでしょう。外の世界を知らないから(流動性がないから)こういうことがおきます。そういえば、さらに余談ですが、民間企業と同じようにどこの役所も例えばフィットネスクラブと法人契約して職員に安く使わせる制度があると思いますが、これもそのうちやり玉に挙がるのだろうか。これぐらいは勘弁して欲しい。
閑話休題。官僚制を語るときにはウェーバーを避けて通れませんが、あるはずなのになんでか本が見つからない。行政学の本も見つからないので今回は原理原則のところは避けて通ります(笑)。多分誰かが補完してくれるでしょう、と他人に期待。
一応「役人の世界には流動性がありません」としておくとして、実態をもう少し。もちろん役所から自発的に出て行く人はたくさんいるけど、役所に戻ることはない。年功序列のピラミッド型組織を維持するためには年次が上がるたびに同期を減らしていくしかなく、戻ってくる余地はないのです。この意味で、役所はいわゆる「終身雇用」ではありません(キャリアに関しては)。しかしながら、途中で役人を放り出してハイそれまでよ、なんてことをやっていると役人のなり手がいなくなりますから、「天下り」という形で特殊法人公益法人、所管企業等々に送り込み、「終身雇用」を実現するわけです。
この構造は、おそらく日本の大企業(特に銀行)にもあり、年功序列と終身雇用を維持するために不可欠なものだったと思われますが、(実際はどうか不明として)そうでなくなった、という声が大きくなり、役人もこれを維持することに限界を感じています。
んじゃぁどうするか。今まで天下りに出していた役人を定年まで雇用すると、人件費が爆発します。ただでさえ国家予算がきつきつで世論の目も厳しい中、それはできない。かといって現行のシステムを維持していては持たない。とすると、総額を抑えて配分を変える、ということになるのでは。
私は、こういう文脈から公務員制度改革を見ています(見当違いだったらすみません)。役所の中には、日がな一日新聞読んでたまにちょちょいと仕事をし、定時に帰っていく、それで年収一千万超という恐るべきおじいさん課長補佐がごろごろしています。年功序列が建前だし、よっぽどのことがない限り辞めさせられないのでこういうことになります。んじゃぁそれを変えようと。
金曜日に報道された人事院の改革案。春先に潰れた経産省主導の改革案とどういうやりとりがあったのかは不明ですが、これもこの線に沿ったものではないでしょうか。もしかしたらあくまで経産省・行革事務局との対抗上の話で、そこまでの戦略性はないのかも。しかしこの案にしても、公務員の「実績」とは何か、全く分かりません。
えー流動性の件から話が逸れました。今でも役所の中に民間の人を呼んでこようという話はたまにあります。けどだいたいポシャります。なぜかというと、最大の理由は給料が安いから。民間の一線で働いている人に比べ、役人の給料はそりゃもう安いです。高給をなげうって役所に来る人はほとんどいません。社保庁長官ですが、日本を代表する大企業である損保ジャパンの副社長から外局の長では給料がいくら下がったやら。しかし今回はいろいろ政治的なあれやこれやがあって決まったことでしょうが、普通では考えられないことです。
ピンポイントで高い給料を払えるか。しかし給料はがちがちに査定されて予算配分されるし、役所内給与体系は年功序列で配分されるし…ということで、無理です。外部人材の登用のためにも、給与体系の改善は急務といえるでしょう。
けど私には公務員の実績なんてものがどんなものなのかいまいち分からない。
アメリカのように政治任用を増やせよ、という話もありますが、しかしアメリカのように外部労働市場が発達していない日本では、じゃぁそれのせいでポストがなくなった役人はどうすりゃいいの、ということになります。ここらへんはflapjackさんがご指摘のとおり、

これどういうふうに導入するかというのが特に初期の段階では非常に重要だと思います。全体のデザインを考えて導入しないと、局所だけで導入すると、そこだけに痛みを強いることになりがちという。というか、そこらへんを逆手にとられて、若年層に負担がおちるようになっているんじゃないかな。

ということ。
いっそのこと今の役人を全員クビにして新しい人を連れてきたら、強制的に外部労働市場が立ち上がりそうな気もしますけどね。行政は止まるけど。