六本木ヒルズと「タワーリング・インフェルノ」

六本木ヒルズの痛ましい事故(及びそれに先立つ無数の事故、さらには自動回転ドアを使用している他のビルの事故)については各方面で報じられ、論じられているところだが、「先立つ無数の事故」がありながら適切な対応を怠った点において、企業モラルが問われつつある。ここで、私は映画「タワーリング・インフェルノ」(ASIN:B0000C9VCN)を思い出す。
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あの映画は、ダンカン社が作り上げた世界で最も高いビル「グラス・タワー」が火事になる話だ。出火の原因は電気配線の不具合。というか、ダンカン社長の娘婿が勝手に仕様を変更して下請け会社に安い部品で工事をさせ、浮いた金をリベートとして還流させていたからだ。ダンカン社長はビルの設計者からその事実を知らされていたが、オープンを遅らせることを拒否し、完成記念パーティーを強行する。そのほかにも防火壁の不具合、燃えやすい内装、火災警報装置の故障など物理的・人為的要因が重なって大惨事になる。

六本木ヒルズもグラスタワーも、それぞれ森ビルとダンカン社の社運がかかった巨大プロジェクト。グラスタワーの成功は、公民権運動のあげく廃れてしまった全米の都市の再開発事業の切り札になるはずだったし、六本木ヒルズは東京の都市再生のみならず、新たな都市文化の発信拠点としての役割が期待されていた(いや六本木ヒルズは焼け落ちてしまったわけではないから、期待された役割を果たす可能性もあるけど)。オープン記念式典に訪れた小泉総理を迎える森社長の姿が、カリフォルニア州選出上院議員やサンフランシスコ市長を迎えるダンカン社長の姿と奇妙に重なる。そして華やかなパーティーの陰で、不具合を認識し惨事に発展する可能性を知っていながら、軽視して適切な手を打たなかった点も。


六本木ヒルズとの比較はおいておくとしても、「タワーリング・インフェルノ」は傑作。パニック映画としても、「社会派」としても。オープニングから巨匠ジョン・ウィリアムスの音楽が炸裂。ああ、ジョン・ウィリアムスの曲をオーケストラで聞きたい…ボストンやニューヨークあたりに行けば聞けるのだろうか(いつ行く余裕があるんだ、と)。
登場人物の中ではウィリアム・ホールデンが一番好き。