竹中大臣、衆院総務委欠席/答弁者は誰か?

衆院総務委員会は5日、竹中郵政民営化担当相が直前に多忙を理由に欠席を通告したため、審議を見送った。開会直後に実川幸夫委員長が「誠に遺憾」と述べて散会を宣言。与野党の理事も強く反発している。

この日の総務委は郵政民営化関連法案の検討状況について審議するもので、竹中氏は1時間出席する予定だった。しかし、竹中氏は開会直前の総務委理事会に「法案の早期提出のため一刻の猶予もない状況であることを理解いただきたい」として、西川内閣府副大臣に答弁を代わるとする文書を届けた。

こりゃすごい。病気けがならともかく、こんなの聞いたことねぇよ。世が世なら竹中大臣更迭だぜ。大丈夫か郵政民営化準備室。
そもそも誰が答弁するかについては、事前に議員(又は秘書)と役所の事務方の間で、質問取りの際に調整がなされる。予算委や自分の役所に対応する委員会においては、「所信を問う」「意気込みを問う」といったものや重要な答弁については大臣、重要度のちょっと低いものについては副大臣政務官、事実確認や具体的施策の細々したものについては事務方(担当の長官・局長・部長)といったところが相場観。他省庁委員会については事務方か。
議員センセイはなるべく大臣を引っ張り出したいところだが(「大臣からこれこれの答弁を引き出した」とアピールできるため)、副大臣政務官制度創設時の経緯もあるし、細かいことをいちいち大臣に聞くのもあほらしいということで、事務方はせっせと「この問は局長でいいでしょう」と説得する。担当局長ならばある程度細かいところまで知っているから、いちいち詳しいレクをしなくてすむし。その結果、相場に落ち着くことになる。
そうやって前日の夜にセットしたものを、いくら他省庁委員会だからといって、委員会直前になって「ゴメンね!」といってキャンセルすれば、そりゃ先生方も「国会軽視だ!」と怒るだろう(役所が少しでも国会をなめた態度を見せたら、「国会軽視だ」と突き上げるのが与野党問わず常套手段)。このドタキャンが与党内調整にも悪影響を及ぼすことは必至。準備室には国会対策も百戦錬磨の次官経験者がごろごろいるはずなので、それぐらいのことは十分わかっていたはず。
法案の調整がどうにもできなくて、答弁できないからか。麻生総務大臣はこう述べている。

麻生総務相は5日の閣議後の記者会見で、郵政民営化関連法案に関し、同日から本格化する政府・与党協議で内容が修正される可能性もあるとの認識を示した。

しかしそれなら副大臣を出しても答弁できないことには変わりない。んじゃこれか?

一方、竹中氏は同日の衆院本会議で「自分は内閣委に属するので、与野党合意の上で必要があれば(総務委にも)出るが、そういうものがあったとは聞いていない」と弁明した。

衆議院TVから書き起こすと、以下のとおり。竹中大臣の答弁は最後の最後。

鮫島議員(引用者注:質問者)にお答え申し上げます。

ドタキャンしたのではないかというご指摘でございますが、そんな事実があったとは認識をしておりません。私は内閣委員会に所属する、そこで答弁をする大臣でございますが、その他の委員会につきましては、これは、国会運営の問題でございますから、与野党合意の上で私が出席する必要があるとの判断がなされたものについては、当然のことながら、きちんと対応させていただきます。

しかしながら今般このような合意がなされていたとは私は承知しておりません。

いずれにしましても引き続き担当大臣として、国会を含めて説明責任を果たしていきたいと考えております。

「所属する」てどういうことやねん。国会議事録に「ドタキャン」って書かれちゃったなぁ。こんな開き直りっぽい答弁したら野党は反発するって。他省庁委員会で大臣出席となれば、普通は委員会の理事会で決められているはず。これが与野党合意でないというなら、竹中氏の与野党合意というのは党首会談での合意のことぐらいしか指さないのか。そんなわけあるかい。
……と思ったら、日本テレビ報道によれば、与党内の一部は竹中氏欠席で了承していたものの、その他に対して「根回し不足」だったとのこと。この「根回し」は役人がかけずり回ったのだろうが、結果的に時間不足・説得しきれずか。一度決まってしまったこと(大臣出席)をひっくり返すことは、決める時以上のエネルギーが必要という一般的な法則を勘案すれば、国会の反発について竹中大臣及び準備室の事務方が甘く見ていた、と言わざるを得ない。
しかしこれはあくまでエクスキューズであって、実は竹中大臣が「逃げた」んじゃなかろうか。つまり、ドタキャンで国会、就中与党の印象を損ない、法案の調整が困難になることを踏まえても、自分が答弁して火だるまになることを避けたかったのではなかろうか。そんな気がしないでもない春の夜。