櫻井圭記という才能

先日友人と「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の中でどのエピソードが一番好きかという話題になった。あれこれ挙げつつも、私は「未完成ラブロマンスの真相」が一番好き、という感想に相成った。
この話はSACのメインの話である「笑い男」からは外れた、番外的なエピソードで、何で好きかというならばおっさんが好きだからとか(変な意味じゃないよ)、大林隆介がいいとか、一つの場所でエピソードが完結する「演劇的」なところがいいとか思いつくわけだけれども、それはそれとして。
その友人から、当該エピソードの脚本を担当した人は東大の院をごく最近修了した人だと聞いて、興味を持ったので調べてみた。(ちなみに脚本家とか演出家を意識しながらアニメを見ていたのは大学生の頃までで、社会人になってからはなんとなく意識の外)
その脚本家は、櫻井圭記という。
こちらのサイトによるならば、この作品では結構いっぱい脚本を書いている。「ささやかな反乱」や「恵まれし者達」といった「番外編」だけでなく、24話25話といった本筋も手がけている。
さて、例によってgoogleさんのお世話になりつつ調べてみると、2002年3月に東大大学院新領域創成科学研究科を修了している。「新領域」ですか。ほへぇ。修論タイトルは「他我を宿す条件 〜人間・ロボット間コミュニケーションの行方〜」。残念ながらネット上で修論を発見することができなかったが、そのタイトルからは攻殻機動隊の脚本を手がけるに十分なバックグラウンドがあるように見受けられる。
………あんれ?攻殻SACの放映って2002年10月からだよなぁ。となると新人のぺーぺーでこの脚本か。いろんな人の修正等が入っているにしても、すごい。そして「お伽草子」のシリーズ構成(見てないけど)。攻殻の脚本をやることになったきっかけはこんな感じらしい。

「当時学生でして、学生論文に攻殻機動隊の引用とかをよく使っていたんですが、教授とI.G社長の石川さんが知り合いでして、石川さんが新しい攻殻の脚本家を捜しているという話を教授にしまして、教授が『脚本書けるかどうかは判らないけど、好きらしいよ』と僕のことを紹介し、それでI.Gに呼ばれまして、最初は設定とかを考えて提案していたんですけど、いつのまにか脚本を書くことになっていました(笑)」

さらに調べていくと、日本マルチメディアフォーラム(現情報通信ネットワーク産業協会らしい。会員名簿を見ると錚々たるメンバーが。これって総務省系なんだろうか経産省系なんだろうか、とか考えてしまう役人の悲しい性)の大賞を受賞している。
残念ながらネット上に論文等はなく、著書もまだないようだが、非凡な才能の持ち主であろう。ぜひ彼の書いた文章を読んでみたい(修論って東大の図書館に行けば読めるんだっけ?)。
思えばエヴァンゲリオンが大ブレークしていたころ、東浩紀五十嵐太郎、谷内田浩正、あるいは大澤真幸といった人々のことを知った。ああいう文章が書ける人になりたいなぁ、と思っていたが、しかしそのころの東大の後輩たちの様々なエヴァ評論なんかを読んで、あー俺って向いてないなぁ、と思い今に至る。というわけで私が書ける文章といったら特殊部隊規制法の考察なんて色気のない文章ぐらいだ。


(追記)
櫻井圭記インタビュー
櫻井圭記他座談会?
海外情報の方が充実しているというのはなんともはや。