政策決定における統計数値……日本の地下経済(門倉貴史、講談社+α新書、ASIN:4062721163)

2002年1月の発売直後に買っておきながら、今の今まで本棚に埋まっていた本。取り出してようやく読み始める。よって読後の感想ではない。
政策立案において数字は必要不可欠である。二つの理由がある。
一つは、実態把握のため。金融政策、産業政策、あるいは農業政策。教育だって数字で把握しなければ問題点把握が進まない(かといって現場を見ないというのも問題だが)。ここで間違った数字を使うと、政策が致命的に間違う。よって慎重な吟味が必要。
もうひとつは説得のための数字。こんなに問題なんですよ、だからこういう政策をとるべきですよ、こういう政策をとればこういう効果が出ますよ、そしてその成果に対しかかる費用はわずかこれだけですよ、だから主査殿*1、このお金ちょうだいね、というのが典型的な使い方。
統計数字は統計の取り方、集計の仕方、定義、集計後の処理の仕方などによって「作る」ことができる。あるいは同時に処理しても「いいたいこと」を補強する材料と弱める材料が両方出てくることがある。その場合、補強材料のみを表に出すことも(ただし弱める材料がないとはいっていないからウソではない、と強弁してみる)。「統計でウソをつく法」(ASIN:4061177206)も参照のこと。
この本は、今まであまり触れられてこなかった日本の地下経済について分析した興味深い本。日経新聞にこの調査の記事が出た時には思わず浜銀総研のwebサイトに行ってリリースを読みふけっていたような気がする。というわけで今回は詳細に検討してみよう。なんか続編も出ているようだし。今後のマクロ経済政策の立案には、このような観点も重要ではなかろうか。
また、信頼のおける統計のない分野での推論のしかたにつき、何らかの知見が得られるのではないかと期待しつつ、読み始める。

*1:財務省主計局にいる、各省からの予算要求を切った貼ったして全体像を作り上げていく人。えらい。この人が物わかりのいい人か激詰めをする人かによって、9月以降の予算要求作業の地獄度合いが決まってくる。