「キーワード作成ガイドライン」「はてなダイアリー評議会」考

id:mittyさんのところとid:sasadaさんのところで、genesisさんのid:genesis:20040302を知る。キーワード作成ガイドラインの作成に関わったものとして、若干の見解を表明しておきたい。
私は、genesisさんが指摘している、

既存のガイドラインを不動のものと考え、杓子定規に当てはめて結論を出そうとする思考によって硬直化することへの危惧である。ガイドラインが【社会通念】の一種だとすると、状況の推移に応じて社会集団の内部で変容していく性格のものだと言える。紛争の発生によってガイドラインの不備が浮き彫りにされたならば、論議を踏まえて臨機応変に変えていくことが出来るし、そうあるべきだろう。

という見解に、全面的に同意する。
そもそも、キーワード作成ガイドライン中の「キーワード作成チェック」部分は、利用規約及びヘルプを上位規範とし、そしてその解釈を行ってきたはてなダイアリー日記の記述及びその時までのキーワード紛争の前例を参考として、キーワード登録の一助になればと思い作成したものである。
キーワード作成ガイドライン」というキーワードを作成した際の問題意識は、利用規約とヘルプの解釈であって、キーワード作成の際にもっとも参考とすべきはてなダイアリー日記における見解を一覧して参照できる場所がない、というものだった。結果、従来からはてなを利用しキーワードのルールに慣れ親しんだ古参のユーザしかルールを知らず、blogブームに乗ってますます増える新規ユーザがそれを知らない、という知識格差が生じ、キーワード紛争の一因になっていた。そこで、関係資料を一覧できる場所があればいいな、と思ったのである。
実のところ作っただけでほっぽってしまっていたのだが、id:yukattiさんのご尽力により様々な資料が収集され、現在その部分は「キーワード作成ガイドライン資料集」として独立している。(実際、作成した7月の段階では私も利用開始してからわずか2週間、今なら市民でないのでキーワードをいじれない時期であった。よって資料を集めようにも知見がなかったのだ。)
さて、その後、キーワードに関する紛争が何度かあり、そのたびにはてなダイアリー日記が見解を発表し、資料集が非常に「重い」ものになっていった。結果として初心者はおそらく見ることなくキーワードを登録し、しばしば紛争になった。「キーワード作成チェック」部分を作ろうと思ったのは、ある人がいわゆる「しなもんルール」に完全に違反する自分の飼い犬の名前を登録したからだ。当時はキーワードのURLがd.hatena.ne.jp/username/keyword/○○○○というようになっていて、確かにキーワードが自分だけのものと誤解しやすい状況ではあったのだが、しかしダイアリーを書き始めて2、3日で初めてキーワードを登録し、しかしそれがルール違反だったがために速攻削除を食らうという体験をすれば、その人は今後キーワードに対して非常にネガティブな反応を示すかもしれない。キーワードの豊かさがはてなの魅力である以上、これはよくないのではないかと考え、昨年12月に「作成チェック」の草案を作成したのである。
「作成チェック」は前述のとおり、利用規約とヘルプ、そしてはてなダイアリー日記における見解と、「慣例」に従って作成した。初心者が、フローチャート式に登録しようとするキーワードの登録可否を簡易に検討できるようにしようとするものであった(が、文章力の不足から長文になり、しかも難しい用語が多くてわかりにくいとの指摘も受けており、忸怩たる思いである)。よって、それらの状況が変化すればガイドラインも書き換えられることが当然予定されている。あれは規範ではなく、例えるなら役所が作る「わかりやすいQ&A」なのである(わかりにくくてごめんよ…)。
よって、「慣例」や「解釈」の形成は、ガイドラインとは別個に行うべきものと考える。実際、従来の「慣例」は、ユーザ間で紛争が起こり、議論の結果形成されたり、最終的にはてなダイアリー日記に運営側見解が発表されるなどして形成された。はてなダイアリーは確かに巨大化したが、今後ともこのルートにより「慣例」の形成は可能である。まず議論から。
さて、はてなダイアリー評議会における議決に対する私の考え方は、genesisさんとは異なる。genesisさんは、第一回テーマ「ボイン」が単争点であり、今回のテーマが多争点であることをもって、評議会議決から「新しい原理原則を引き出すことができない」ことを問題点として指摘されているように見受けられる。しかし、私の記憶が確かならば、はてなダイアリー評議会は「新しい原理原則」を引き出すための場ではなかったはずだ。
そもそも評議会は、「せっかく・ぐぐって論争」の結果、昨年11月に導入された制度であるが、その論争で問題になっていたのは、「せっかく・ぐぐって」が「多くのユーザーにとって有益であるため固有名詞化されたキーワード」に該当するか否か、というものだった。この種の紛争を解決するために、はてなダイアリー評議会制度が設けられたのである(せっかく・ぐぐっては名詞でないため削除となったが)。
評議会を新たに新しい原理原則を導き出すための場と考えるならば、評議会システムの改善が必要であろう。例えば原理原則自体を争点にする評議会の開催である。今回の件に関連していうならば、例えばヘルプに記載されている「粟田町ルール」の撤廃等。しかし私は今のところその必要を感じない。「粟田町ルール」や「しなもんルール」が作られた際も、何らかのキーワード紛争があってのことだったと思うのだが、ちょっといまその関係文書を見つけ出すことができなかった。しかし、その紛争の前提条件がおそらくいまも存続していて、「粟田町ルール」の廃止に伴いまたそれが表面化することは十分に予想される。
キーワード紛争とルール策定の歴史は、キーワード登録可能性を狭める歴史であった。はてなのシステムから導き出される現行ルールは、根本たるはてなのシステムが変わらない限り引き続き意味を持つ。だからルール削除のための評議会というのはあまり考えたくないし(紛争を増やす可能性が高い)、ルール策定の際には評議会に頼るべきではない。ルール策定=登録可能性の減少であるが故に、常にキーワードの魅力を減じる可能性があるわけで、そこのさじ加減は、ユーザの意見を大いに聞くにせよ、最終的にははてな運営側が行うべきものと考える。というわけで、評議会システムは、当面、あくまで「個別キーワード紛争の解決」のみに使われるべきと考える。


ついでにここに告白しておく。私がid:kanryo:20030001にてキーワード作成チェックの草案を発表したとき、冒頭部分は次のようになっていた。

はてなダイアリーヘルプ及びはてなダイアリー日記で示されたルールの他、はてなダイアリーユーザの議論の結果生まれてきた慣例等も踏まえ、以下にチェック事項を示します。キーワードを作成・編集しようとしている人は、これを参考にキーワード登録の可否・適否について検討してください。

んで、実際に「キーワード作成ガイドライン」に草案の内容を反映させたあと、冒頭部分は次のようになっている。

はてなダイアリーヘルプ及びはてなダイアリー日記で示されたルールの他、はてなダイアリーユーザの議論の結果生まれてきた慣例等も踏まえ、以下にチェック事項を示します。キーワードを作成・編集しようとしている人は、これを参考にキーワード登録の可否について検討してください。

我ながら細かい工作をしたものだ。キーワードに記載されている文面からは、草案にあった「適否」が抜け落ちていることにお気づきになるだろうか。つまり、「立法意思」としては、このガイドラインに違反しないからといって、すなわちキーワードに「適する」わけではない、ということだ。つまり金科玉条のごとく「ガイドラインに違反しないからあるキーワードを登録してよい」とか、「ガイドラインに違反しないから削除すべきでない」とか、「ガイドラインに抵触しないからなんでも登録してよい」ということは言えないのである。
こんな細かい文言の調整をしているから役人は深夜まで残業するのですよ。あほらしいと思われるかもしれないが、その文言から発生する効力が違ってくるので、文言には細心の注意を払います。