姉歯問題雑感

まあサンプロ見たわけですが、なかなか激しいですな。というか宮澤さん痩せ細ったなあ。ガンとかじゃないよなあ。
さて姉歯事件に関しては、たくさんのコメントありがとうございました。だらだらとまたも雑感を述べさせていただきます。

モラルハザードの問題

当然予想された反応として、「じゃあ行政がやっていたら大丈夫だったのか」という問題があります。姉歯事件発覚後、地方公共団体で行った構造計算確認の一部に瑕疵があることが判明し、俄然この論調は説得力を増すかに見えますが、さてどうでしょう。
イーホームズ(あるいはその他の指定検査確認機関?)の態様はモラルハザードの典型です。
自らリスクを取っても、現出したリスクをかぶるのが他人である場合、モラルハザードが起きます*1イーホームズその他の場合、今後どのような展開になるのかわかりませんが、責任は国なり地方公共団体なりが取ることになりかねません。イーホームズは、確認検査代金は受け取っていながら、賠償責任を負わないことになります。
そういう場合でも、もちろんイーホームズその他の確認検査機関の指定は取り消されるでしょうし、もしかしたら建築基準法等における処罰の対象になるかもしれないし、国や地方公共団体イーホームズその他に求償できるでしょう(?)。欠格条項の関係もあり、それなりにイーホームズにとってはリスクのあることです。しかし、報道されるところでは、イーホームズはほとんどまともに確認検査業務を行っていなかったとのこと。つまるところ上記のような不利益処分・処罰の可能性は、少なくともイーホームズに関しては、モラルハザードの防止には全く役に立たなかったということになります。
行政における確認だって、ミスをしても役人個人は責任を取らないじゃないかという議論もあります(個人的にはちょっと受け入れがたい議論ですが)。ご指摘のとおり、言い方は悪いですが最後は税金で尻ぬぐいという面もあります。それではどちらを取るか。どちらが社会的厚生の減少を最小化するか。
んなもん「どちら」とかいう問題ではなく、規制緩和のやり方の問題でしょう。そして、それは非常に重大な問題です。90年代から、規制緩和委員会・規制改革委員会総合規制改革会議規制改革・民間開放推進会議と連綿と続く規制改革路線の下、かなりの数の行政の業務が確認検査業務と似たような形で「規制緩和」されたからです。具体的には、従来は国・地方公共団体や法律で明示的に指定された特殊法人公益法人が行っていた業務について、「指定○○機関/法人」にやらせることとし、行政はその機関の指定・監督・処分を行う、というものです。(参考:規制緩和推進3カ年計画(平成10年3月31日閣議決定)及び別紙。今回問題になっている「指定確認検査機関」に係る部分はこれ。その他基準・認証関係はここ。)
果たして本件が非常に特殊例なのか、それとも「指定○○機関」型の規制緩和には普遍的に見られるものなのか、では規制緩和をすべきだったのか、要確認だと思います。こういう時こそ、規制改革・民間開放推進会議がしっかりとチェックすべきではないでしょうか。新しいことばっかりやってないで。いやチェックすべきって言っても、結局は各省庁に「チェックせよ」という指示が降りてくるだけなんですがorz。そして問題があったとしたら、「やり方が悪い」って言われて全部各省庁の責任になるんですがorz。


これから姉歯問題に関して以下のような目次でもって雑感を述べていこうと思います。おそらく、上のエントリに対して寄せられるご意見・ご感想について十分答えられる内容になると思います。長くて生暖かい目でお待ちください。

民の「責任」と公的関与

技術的解決方法

酒と泪と「官から民へ」と「小さな政府」と「事後チェック型行政」と「公務員削減」と「公務員人件費削減」

*1:ちなみにキーワード「モラルハザード」がどのような使われ方をしているのか、月に一度ぐらい見て回っているのは秘密だ。