違憲判決をネット選挙活動解禁の足がかりに

いやー、違憲でしたね。

海外に住む日本人の選挙権を制限している公職選挙法の規定が「普通選挙を保障した憲法に反する」として、在外邦人ら13人が、国を相手に選挙権の確認や1人当たり5万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が14日、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)であった。

大法廷は公選法違憲と判断し、請求を退けた2審・東京高裁判決を破棄して原告の選挙権を確認するとともに、国に1人当たり5000円の賠償を命じた。原告の逆転勝訴が確定し、これを受け、政府は同日、来年の通常国会までに公選法を改正する方針を固めた。

まあこれはこれとして、判決を読むと、興味深い点があります(最高裁仕事早っ。行政府も見習うべき。けどいい加減URLにdominoとか出すのはどうかと思いますが)。

本件改正は,在外国民に国政選挙で投票をすることを認める在外選挙制度を設けたものの,当分の間,衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員の選挙についてだけ投票をすることを認め,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙については投票をすることを認めないというものである。この点に関しては,投票日前に選挙公報を在外国民に届けるのは実際上困難であり,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達するのが困難であるという状況の下で,候補者の氏名を自書させて投票をさせる必要のある衆議院小選挙区選出議員の選挙又は参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認めることには検討を要する問題があるという見解もないではなかったことなどを考慮すると,初めて在外選挙制度を設けるに当たり,まず問題の比較的少ない比例代表選出議員の選挙についてだけ在外国民の投票を認めることとしたことが,全く理由のないものであったとまでいうことはできない。しかしながら,本件改正後に在外選挙が繰り返し実施されてきていること,通信手段が地球規模で目覚ましい発達を遂げていることなどによれば,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達することが著しく困難であるとはいえなくなったものというべきである。

これを見るならば、要は個人名を書かせる選挙区選挙の場合、その立候補者に関する情報の伝達が困難だったため、ある程度はやむを得なかった、しかしながら「通信手段が地球規模で目覚ましい発達を遂げていることなどによれば」それはできるようになっている、ということです。
候補者個人の情報を伝える公的な情報は、選挙公報及び政見放送です。そして、これらが容易にインターネットを通じて全世界の日本国民に伝達できることは火を見るより明らか。そこまでにならなくとも、紙媒体の選挙公報だって、ネット経由で在外公館に転送し、そこでプリントアウト・コピーして、やってきた在外国民に配布するという手段も取り得ます。別に各地の選管が印刷した選挙公報を全世界の在外公館あて発送する必要はありません。
さて具体的にどう実現するか。いや具体的にも何も上記の通りですから、費用対効果を考えるならばネット経由の選挙公報政見放送電送が手っ取り早いのですが、「複写」の規定がないことを実現しようとわざわざ専用ソフトまで用意する政治関連法の運用ですから、案外国内プロバイダからは接続できない設定の専用サイトを用意するとかアホなことをやりそうです(そして串経由であっさり国内からも見られる)。
さて、選挙公報政見放送がどうにかなったとして、しかしそれだけでは「実質的には」在外国民にとって十分な情報が集まるとは限りません。公職選挙法は選挙活動を認めており、その中にはビラ・パンフレットの配布、ポスターの掲示等が認められています。これらは国民にとって重要な情報であり、これらが確保されない限り在外国民は「実質的な」情報の不利をおっていることになります。これは解消されるべきではないでしょうか。
もちろん、これらの情報が海外で利用できるようになっていないことをもって国を訴えても、おそらく認められないでしょう。しかしそれは正義か?
この際は、ネット経由の選挙活動をある程度認めて、在外国民にも国内にいるのと同等の情報を提供できるようにすべきではないか。そして今や、「通信手段が地球規模で目覚ましい発達を遂げていることなどによれば」、不可能ではありません。
今回の違憲判決をもとに、そういう議論が永田町や日本全国で盛り上がらないかなあと思っています。
そうなれば、山下万葉タンのすてきな選挙公報を、全世界で読むことができるのに。


…あれ?政見放送は違うか。