National Pearl Harbor Remembrance Dayについて

ネタもないので絡んでみる。といいつつ職務質問の件については大胆に回避(笑)。あの話キツいわ。

inasannhe

『いなさん、本当にそうですか。パールハーバー記念日は毎年ありましたが、法改正が(public law 103-308)があって、正式に国民の日に制定されたんですから、毎日新聞がある程度、正しい。また、種々の方法で、英米は日本真珠湾とテロは重ねています。その点チェックせずに、「馬鹿記事」と広めるほうが、責任が大きいんでは?』

昨年12月7日の記事に投稿いただきました。「いなさん」や投稿者の名前については「みなさん」の「m」が抜けているだけだと思いますがいかが。
それはそれとして、web上で調べてみたところ、そもそもpublic law 103-308は第103議会、すなわち1993年から1994年の間に採択されたものだということが分かりました(このサイトで調べました。検索結果は一定時間しか保持されないようなので、具体的にURLでは示せませんが)。その条文を見ると、日本の法律と形式がずいぶん違うのでとまどいますが、要は1993年から既に12月7日は「National Pearl Harbor Remembrance Day」になっており、大統領に毎年宣言を出す等の措置をするよう要求しています。確かに2003年の宣言には「The Congress, by Public Law 103-308, as amended, has designated December 7, 2003, as "National Pearl Harbor Remembrance Day."」とあり、amendされたように見受けられますが、この文言は年号だけを変更して2001年から使われており、2003年が特別であったことを示すものではありません。また2000年以前は"as amended"なしの表現になっており、いずれにせよ12月7日が真珠湾英霊記念日としてdesignateされたことに変わりはありません。
これに関連して調べると、第106議会において、S.RES.386という上院決議が見つかりました。2000年12月7日付。これは"(the Senate) urges the President to take more active steps..."ということで、「多くの市民は12月7日にunawareだし連邦のオフィスも半旗にしてないし、大統領もっとしっかりやれよ」とは言っていますが、記念日の指定について何らかの変更を加えるものではないように読めます。また、107議会においては上下両院でそれぞれ議決がなされているようですが、これはどちらも大統領に何かせよというものではないように読めます。
以上から、1993年以降は公式な記念日になっていると考えても間違いではなく、2003年が法的に初めての記念日ではないように思います。私は米国法について勉強したことがないので見落としがあるかもしれません。inasannheさんのおっしゃる「法改正があって」の根拠を教えていただけると幸いです。
次に、私は毎日新聞の記事について、事実関係が間違っていると書いてはいません。むしろ「確かにこの記事中、間違った記述はない。」として、事実関係の正確さについては認めているところです。この点は誤解なきよう。
また、「種々の方法で、英米は日本真珠湾とテロは重ねています」とのことですが、この点については異存はありません。911直後から「奇襲」や「自爆攻撃」という点でテロリストと60年前の日本を重ねる論調が一部にあったことは承知しています。毎日記事は、宣言の形式と論理展開が似ているところをもって日本とテロリストを重ね合わせていることの証左としているように見えます(厳密には因果関係のよく分からない文章にしています)。しかし、この大統領宣言を評価するに当たって重要なのは、追記部分の日経記事を見ても分かるとおり、アメリカ政府があえて「日本」という固有名詞を外していることです。前例を踏襲せず、あえて変更したということは、何らかの意図があったと考えるのが妥当であり、日経記事にいう「両国関係への配慮から例年通りの名指しを避けたとの見方」は合理的だと考えます。
私があのエントリで指摘しているのは、(1)真珠湾英霊記念日は2003年が初めてではなく、毎年のことであること、(2)「形式や論理展開」は、「愛国の日宣言」と「真珠湾英霊記念日宣言」だけが同じなのではなく、911以前の真珠湾宣言においても同様であること、という二つの点について毎日記事が重要な情報を削り、誤った認識・誤解を広めようとしているのではないか、ということです。また論評についても日経の方が妥当ではないかと思われます(もちろん、毎日の記者が「日本」抜きに気づかなかっただけ、という可能性もありますが)。この点、反論はありますでしょうか。
ついでに申し上げるならば、私や当該エントリへのコメントを見ても、毎日記事を「馬鹿記事」としている論調は見られません(私は、これは馬鹿記事ではなく、ある意図を持った「ひどい」「卑劣」な記事と評価しています)。sharpさんのコメントも、「バカ」という言葉こそ使っているものの、この記事について「バカ」と評しているわけではないように思えます。なぜinasannheさんが「『馬鹿記事』と広め」ているとお考えになったのか、その根拠をお伺いしたいです。