イラク邦人人質事件、共産党と社民党の対応
さて、なんか知らんが「自分探し」の馬鹿者がイラクでとっつかまったようで。彼は外務省が発した退避勧告をアンマンのホテルで見た上でイラク入りしているので、このような事態になったことはまさに彼の選択の結果であり、リスクを承知してのことだろうから、遺憾ではあるが、同情の余地はない。
さて、小泉総理は早々と人質の救出に全力を尽くすが自衛隊は撤退せずを公言し、公明党も支持し、民主党も即時撤退を求めないことを明言した。私も小泉総理の対応を支持するものである。ところで共産党と社民党はどうだろう。実は、面白いことになっていた。
まずは共産党の声明。
イラクにおける日本人拘束事件について
一、イラクの武装集団による日本人拘束事件がおきた。いかなる理由であれ、人質をとり、要求が入れられなければ殺害するなどと脅迫することは、許すことのできない蛮行であり、ただちに解放すべきである。
日本政府は、なによりもまず、人質の身柄の安全の確保と解放のために全力をつくすよう強く求める。
一、大義のないアメリカの戦争と占領がつづくなかで、イラク情勢はいよいよ悪化している。アメリカの不法な戦争を支持した小泉内閣の誤った判断によって、自衛隊をイラクに派兵した結果、日本は否応なしに、アメリカの不法な戦争と占領の一翼をになう立場に立たされている。わが党は、政府のイラク戦争支持の立場にも、自衛隊派遣の決定にも一貫して反対してきた。日本が、今後、国連の枠組みのもとで、主権をもったイラクの再建と復興に本格的に協力してゆくためにも、今回の事件をはじめ、この種の事件がひきおこされる地盤を取り除くためにも、政府は、自衛隊のイラクからの撤退をはじめ、対イラク政策の根本的な転換に取り組むべきである。
解説は後回しで、次は社民党の見解。
イラクでの日本人男性拘束について(談話)幹事長 又市征治
1.本日、イラクで日本人男性1人がイスラム武装組織に拘束された。政府は安否の確認など情報収集を急ぎ、人命尊重を第一に人質解放に全力を挙げるべきである。
2.小泉首相は早々に「自衛隊は撤退させない」と公言したが、人質の安全を考えると人命を軽視した判断だと言わざるを得ない。人質拘束という卑劣な行為は言語道断だが、戦争を支持し、多国籍軍にまで自衛隊を強引に参加させてきた政府の判断の誤りについても改めて問題にせざるを得ない。
3.周知のように開戦時にイラクに大量破壊兵器は存在せず、国連のアナン事務総長がイラク戦争の違法性を言及するなど、この戦争に「大義」も正当性もないことは明らかである。またイラク全土で依然として戦闘状態が続き、サマワでも砲弾の着弾が確認されるなど、イラク特措法に照らしてさえ、自衛隊がイラクに駐留する根拠は失われており、基本計画の延長など到底容認できるものではない。人質解放に万全を期すことと同時に、イラクからの自衛隊即時撤退を要求する。
以上
両党の見解に対し色々言いたいことはあるが、それはひとまず置く。ここで注目すべきは、共産党は政府に対し、自衛隊の即時撤退を要求していない、ということだ。共産党は、「政府は、自衛隊のイラクからの撤退をはじめ、対イラク政策の根本的な転換に取り組むべきである」とは言っている。しかし、なぜ取り組むべきかというと「日本が、今後、国連の枠組みのもとで、主権をもったイラクの再建と復興に本格的に協力してゆくためにも、今回の事件をはじめ、この種の事件がひきおこされる地盤を取り除くためにも」ということだ。「この種の事件がひきおこされる地盤」を取り除くために撤退を要求するのであって、この人質の解放のために撤退すべきだとは主張していない。
一方、社民党は相変わらずだ。人質解放と自衛隊撤退の論理的関係は不明であるが、自衛隊「即時」撤退を要求している。
ここへ来て、非常に慎重な言い回しながらも国際テロ対策の現実へと舵を切った共産党。相変わらず現実が見えていない社民党。もちろん武装闘争を行っていた共産党の過去を忘れるわけにはいかないが、この姿勢は評価できるのではないか。