郄村薫「リヴィエラを撃て」(新潮文庫、ASIN:410134714X、ASIN:4101347158)

読了。
郄村の描く男たちは、一言で言うならば、救われない。ストーリーも救われない。爽快感がまるでない。
私は「レディ・ジョーカー」と「マークスの山」しか読んだことがなく、それだけで郄村を語るのもおこがましいが、しかしこの二作の筋書きを頭に入れて「リヴィエラ」を読めば、どうあがいたって爽快感のある結末を想像することはできない。
何かを背負ってしまったものの、それを抱えて身動きがとれなくなる男たち。高邁な理想、複雑怪奇な権力機構、そして自分自身。「悪人」は踊り続け、「善人」は土の下へ。
「巨悪」は眠り続けるのだ。かつて、政治学の講義で、「問題を争点化させないのも権力」と教わった。そのとおりだ。それが権力だ。権力機構の末席に連なっているが、一生そんなところへは行けないような気がする。
郄村薫の本は、おすすめです。