ハンセン病についての愛・蔵太氏の日記

id:lovelovedog:20031126#p1について。
愛・蔵太氏とは思えないミスというか何というか。もし意図的ならその意図を聞いてみたいところだが。
氏は「相田寓話 (11/19)  熊本のホテルと差別」を全文転載し、「興味深い」としているが、この記事は前提が根本的に間違っており、どうもこうも、という感じである。
「相田寓話」では、

私は今回の熊本の事件について、ハンセン病団体側にも非があると感じている。まず、ハンセン病団体が予約の電話を入れたのは9月、そして元ハンセン病患者であることを告げたのは11月である。なぜ最初に言わなかったのか。当然拒むホテルもあろう。そこを説得して、病気への理解を求める努力をなぜ彼らはしないのか。

としているが、予約は「ハンセン病団体」が行ったのではなく、熊本県が行ったものだ。潮谷・熊本県知事会見(会見の項目欄をクリックすると配布されたと思われる文書が表示される)や、その他新聞社のwebサイト(愛・蔵太氏が引用した毎日新聞、地元紙の熊本日日新聞)等を見ても、「宿泊予約をハンセン病団体が行った」とする記述は見あたらない。「相田寓話」において初めてそのような説に出会った。そして熊本県のことを「ハンセン病団体」とは普通言わないだろう。
「相田寓話」は、ハンセン病団体が予約時にハンセン病団体であることをホテル側に告げなかったことを非難し、

このハンセン病団体の職員は間違いなく正義に酔いしれた挙げ句昼間にランプを灯しながら「差別はないか、差別はないか。」と社会にうろつく妖怪である。
なんで差別反対運動に携わっている奴らってのはきまって”寛容”さがないのかね。そのくせ世間には寛容(理解)を求める。何か自分たちが特別な存在とでも勘違いしてんじゃねーか?

と、罵倒している。もちろん前提が間違っているので筋違いも甚だしいし、文章全体も論理がおかしくなってくる。
単なる誤解か、あるいは作為的なものかは知らない。しかし、新聞テレビを含めどこにも「ハンセン病団体が予約した」などというソースがない中で、そう思ってしまえるというのは、「ハンセン病団体なんて気にくわねぇ徹底的に批判してやるぞ」というあふれ出る意欲が予約に関する記憶を書き換えてしまったからではないか、と思ってしまう。その人が普段何を考えているのかが図らずもよくわかったような気がする。
この場合直前まで知らせなかったのは県の職員であろうので、県職員の体質は批判されてよかろう(「ハンセン病の団体だと言ってホテルに断られたらいろいろと面倒だから、黙っていよう。どうせ宿泊拒否なんてことはしないだろうし」とでも思ったのかもしれない。わからない。ありそうな話と言える)。「相田寓話」で指摘されているように、宿泊するのがハンセン病団体だと直前になってからわかったのではなく、予約時にきちんと説明しておけばこんな騒動にはならなかったかもしれない(宿泊拒否はアイスター本社の指令らしいのでそれでも宿泊拒否をして騒動になったと思うが)。しかしホテル予約の時点において責任があるのはあくまで熊本県の担当者とアイスターまたはアイレディース宮殿という恥ずかしい名前のホテルであり、「ハンセン病団体」とやらは関係ない。
いつも朝日新聞の記事について鋭い批判をとばす愛・蔵太氏が、前提が間違った文章を、前提が間違っているという注意書き抜きで、全文転載していることに驚いた。しかも同じエントリの中に「県が予約した」という新聞記事を引用しておきながらである。

ホテル側は当日の宿泊客にアナウンスする必要はあるだろうし、宿泊する側も、(もしこの情報が正しければ)事前にどういう団体なのか、ちゃんと説明しておくべきかな、と思いました。

氏が「相田寓話」を転載した趣旨は、日記本文にある上記部分だと思う。そしてこのこと自体は、たとえ予約したのがハンセン病団体だろうが熊本県だろうが、正しいことだと思うし、私もそう思う(SF大会という例示には笑いました。アレは不治の病だ)。しかしその趣旨を補強するために転載した文章がまるでダメダメである。氏の批評の趣旨が「こんな誤解をしているやつがいるがどういう思考回路の結果こうなったんだろう」というものなら理解できるが、全く無批判で載せている。「もしこの情報が正しければ」との限定は入っているが、毎日新聞の記事は「この情報が正し」くないことを示唆しており、ソースをきちっとたどって本当かどうか吟味するシリーズ(別名天声人語批判シリーズ(笑))を展開している氏としては脇が甘いと言わざるを得ない。
今回の件はいまいち意図が不明であるが、鬼の霍乱というところだろうか。天声人語批判シリーズ(または石原発言のソースを探す旅)は知的刺激をがんがん受けるので、楽しみにしている。今後とも鋭い舌鋒に期待しつつネットの隅っこから見ていよう。
それにしてもアイスターって怪しげだなぁ。旅館業法違反の告発がきっかけで熊本地検東京地検アイスター本社に家宅捜索に入ったら、いろいろ見つかりそうな予感。