なくせ天下り?探偵ファイルの記事より

ReadMe!でトップをひた走る探偵ファイルにこんなこと書かれちゃ黙っているわけにはいかない。webの片隅で、細々と問題点を指摘しておこう。また論争の種だなぁ(笑)。
天下り役人の給料は、国民の税金(厳密には税でない、各種隠された出費を国民は強いられているが、それも含めて「税金」としておこう)から出ている。これは半分正しい。ここで指摘されているのは、国から委託費や補助金の形でお金をもらっている特殊法人公益法人への天下りを指しているのだろう。その補助金等はもともと国民の納めた税金なのだ。民間企業への天下りは論を複雑にするので、当座ことわりなく「天下り」という語を使った場合は、「国家公務員が退職し、特殊法人公益法人に再就職すること」とご理解いただきたい。
さて、天下りを全廃した場合国民の税金の「浪費」は減るか。おそらく減らないと考えた方がいいだろう。なぜならば、天下りをさせないということは、役所の中での雇用を維持するということだからだ。
やめさせちゃえばいいじゃん、と思う方もいらっしゃるかもしれない。しかしよく考えて欲しい。天下りは40代、役職でいうと課長レベルから始まる。そんなときに肩たたきをされた人間が役所を放り出されてどうなるか。子供はまだ小さく、これから高校・大学に行くことを考えるとお金もかかる。役所で身につけたスキルは利益を生むものではないから、誰も彼も民間企業から引く手あまたとはいかないだろう。
念のために言っておくが、私はもちろん勤務態度が悪い、あるいは能力に著しく乏しい公務員をクビにすることは賛成である。いまは本当によっぽどのことがないとクビにならないから、普段の勤務態度にも危機感がない。しかしクビの脅威が迫ればいやでも真面目に働くようになるだろう(組織うちの2割は使えない、という法則は生きるだろうが)。しかし、それと天下りは違う。天下りは、1.組織のピラミッドを維持するため、2.公務員の人件費を抑制するため、3.公務員数の増大を防ぐため、等の理由で行われている。早期に天下り対象になったからといって、直接彼の勤務態度・能力が悪かったのではない。年功序列を維持し、しかもピラミッドを維持しようと思ったらどんどん辞めさせていくしかない(年功序列等の弊害を少しでも何とかしようと、公務員制度改革が検討されている)。
いや、「辞めさせていくしかない」というのはウソ。組織をどんどん大きくすればポストも増えるし、すぐに辞めさせる必要はなくなるだろう。しかし、行政改革の世の中である。総定員法によって国家公務員の上限人数が設定され、しかも毎年毎年定員削減をやっている。組織が増える余地がない。
このあたりに民間企業と違うところがある。民間企業では、組織を増やし放題である。いや、これは誤解を招く表現だ。組織を大きくすることが利益をもたらす・利益をさらに増やすためには組織を大きくしなければならない場合に限って、組織の増大が合理的と見なされよう。役所はどうだろうか。仕事が多い少ないにかかわらず、あるいは必要な業務が増えているにもかかわらず、定員は増えないのである。「民でできることは民で」というのが行政改革のスローガンで、確かにいらない業務も目に付くが、必要な業務は山のようにあるのである(国民の皆様が「んなことやらんでいい」と言ってくれればいいかもしれないが、社会の木鐸たるマスコミの皆様は「無駄行政」「規制行政」を批判する傍ら「規制の不備」や「○○について国はなにもしてくれない」と言うのである)。
業務の増大と総定員法の縛りの両立の方法の一つが、以前の日記でも指摘したが「特殊法人」「公益法人」である。本来ならば国でやるべき業務を、国の外の団体にやらせることで、国の定員を増やさず、しかも業務を遂行できる。こう考えると、特殊法人等の設立は民間企業における当該企業の組織の増大あるいは子会社の設立に似たようなものとして捉えることができる。
民間企業にしろ役所にしろ、40半ばで路頭に迷うことが分かっているなら就職しないだろう。民間企業は確かにリストラもあるが、子会社関連会社への出向という形の「天下り」がある。この事実、サラリーマン諸氏は理解していると思うがワイドショーや夕方のニュースショーの常連客たる主婦のみなさんは理解しているだろうか。民間企業でもそうやっているのに、役所だけダメというのは不合理であろう。もちろん役所の方が国民の血税を使っている以上、よりいっそう職務に厳しくあらねばならないとは思うけど。
さて、天下りをやめて、もっと積極的に民間企業へ行かせたらどうか。しかしこのご時世、民間だって苦しいのに公務員まで面倒見切れない。40過ぎて役所の仕事のやり方しかできない役人は、民間に行っても使えない。かといって規制を盾に民間に天下りさせることは、今でも十分批判がある。
また、民間企業への再就職は別の問題を引き起こす。癒着である。役人OBは役所に顔が利くので、どうしても様々な場面における情報を素早くとることができる。これは企業にとっては魅力だろう(業種によるけど)。それがまた不透明な関係と批判されよう。
で、40半ばで路頭に迷わせず、しかも天下りを廃止するためには、役所が引き続き雇用するしかないのである。そうなったらどれぐらいコストがかかるか。年功序列で年寄りの給料は高い。そして総定員法があるから若い人を増やせない。ひどい話だ。この日記もつっこみどころ満載の文章だが、せめて上記のことぐらい考えて欲しい、と皆様にお願いする。*1

消費税の話だが、少なくとも物事が分かっているヒトは90年代初頭から消費税率上げ不可避、と言っていたはず。90年代の景気対策公共工事、減税のツケは、いずれ払わなければならない。給料をもらうためには労働しなければいけないように。かつていい思いをしたのに、いまさら負担はしたくない、というのはわがままだろう。
いや、90年代初頭どころか、老人医療費無料なんてことをやっていた頃から将来大変なことになると分かっていたはず。それを若者に押しつけるなー!!

しかし探偵ファイルの主張はそれはそれでありである。要は税金も安く、その代わり公共サービスもない完全自由競争社会。国会議員を30人にするということは、いま衆参あわせて750人いるから、96%カット。役人もそれにあわせて削ると、いま国家公務員が約110万人いるから4.4万人か。役所は警察・防衛・外務ぐらい残せるかと思ったけど、自衛隊も維持できないなぁ。そういう社会は、確かに可能性としてはありだ。私は反対だが。

それにしても、「自分たちの給料、手取りは20万円でも本当は10万円の価値しかないのだから、この際、10万円に落として、その分、物価や税金を安くして、海外に逃げるお金や投資を国内に戻すべきだと思う。」というのは慧眼。そして自らそれを実行するところもすばらしい。大住氏の今後の生活レポートに期待する。

*1:ちなみに、公務員は失業保険に入れません。念のため付記。