地方自治体と官僚〜くまもと解体新書(熊本日日新聞)

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(第2章第2部「出向幹部」)http://kumanichi.com/feature/kaitai/2sho3bu/01.html(第7回まで)
ガンパレ好きな私としては熊本は要チェックであり、当然味のれんにも行ったことがあるのだが、熊本に興味を持つものとしてチェックしておかなければならないのが「鶴屋」と「熊日」であろう。鶴屋は熊本まで行かないとチェックできないが、熊日はwebで読める。ちなみにガンパレを作ったアルファシステムを採り上げた特集もある(30代の地図)。
熊日の特集で上記(出向幹部)の記事を見つけた。地方自治体には多数の中央官僚が出向している。記事中にも指摘されているが、情報をいち早く取り、そしていち早く地方の現状を中央にインプットし、そして多くの予算を獲得する。これが地方出向中央官僚の使命である。私も結構地方出向者から問い合わせを受け、様々な情報を流してきた。それが役立ったかは分からないが。逆に地方の話を聞く時には窓口になってもらったりする。アポ取りまでしてもらっちゃったりする。そこは共存共益か。
情報交換というのは、あるいは情報提供というのは本来的には国民皆を平等に扱うべきだろうが、そこは人間なので、知り合いの方が話が弾む(こういうのは「不透明な行政」と言われてしまうが…)。ということは、地方出向者がいるかいないかで、その地方と中央省庁との結びつきが圧倒的に違ってくる。地方出向者は重要である。
当然地方出向役人に対するプロパーの視点は厳しい。少し長いが引用。

今年四月、文部科学省が「日本版シリコンバレー」の育成を目指して創設した産学官共同の技術集積の拠点、知的クラスター創成事業。熊本県は十二の候補地域、六の準指定地域の中に入れなかった。  直接の担当である商工観光労働部総括審議員・小山智(40)=元経済産業省調査統計部監理課長補佐=は「構想が雄大だっただけに、起業化に疑問が残るというのが理由だったようだ」と分析。「今後は関係事業を一つ一つ取っていく」と雪辱を期す。  しかし、県庁内には冷ややかな意見も渦巻く。ある県幹部は、財務省時代に文部科学省とのパイプをつくっていた田島を「積極的に動いてもらった」と評価する一方で、「知的クラスターは今後五年間で計二十五億円。この分野では大型の事業だった。結局、構想が劣っていたということだ」。  文科省は十二日、知的クラスターのミニ版に当たる「都市エリア産学官連携促進事業」(三年間で約四億二千万円)で、県提案の研究開発を採択した。しかし、先の県幹部は「今さらちまちました事業を取っても、どれほどの意味があるのか。役に立たない役人は帰ればいいんだ」と言い切った。

官僚の中で地方出向が多いのは、なんと言っても総務省(旧自治系)である。一年目の研修が終わって、秋ぐらいから地方に出向し、2年ほどいて霞が関に戻り、しばらく勤務してまた地方に行くのである(余談だが「一人で行って二人で帰る」「三人で帰る」ということがよくある。つまりは向こうで嫁さんを見つけ子供まで作って帰ってくる例が多い、ということ)。
さて、この地方自治体と中央官庁の出向を通じた結びつきは良いか悪いか。あるいは望ましいか望ましくないか。望ましくないならば、いわゆる「地方分権」「三位一体」で中央に頼らずとも独自行政ができるようにならなければならない。しかし、そのためには税収に見合った行政をすることが重要である*1。それを地方住民は理解しているか。地元から上がる税収ではとても現在の歳出規模を維持できないような田舎出身の私としては不安である。
一連の「くまもと解体新書」は非常に読み応えがある。ぜひ一読を。

*1:もちろん、現在進行中の議論でも地方交付税交付金を全部なくしてしまえと言っているわけではないことは理解している。あくまで極論である。